親方とお会いした時のこと
私は、親方とお会いしたのは数える程しかありません。
でもそこは親方です。
インパクトを残します。
私が閉店間際に挨拶に行ったある日、
“そこに座わんなさい”
とカウンターの真ん中に座らされました。
親方は何も言わずに、
お鮨を握って私の前に出してくれました。
お鮨はみんな茶色です。
穴子、鮑、蛤、蛸、煮イカ
煮詰めが漆黒に艶めいています。
この店の穴子を初めて食べて、目を見開く私を見て
親方の口元が 「フフッ」と動きます。
その時はイマイチわかっていませんでしたが、
この鮨は、うちの店独特のもの、だから先々の為に
この味を覚えておくようにというメッセージだったのだと思います。
それともう一つの思い出。
記憶に残る親方からのお言葉
結婚当初のまだ20代前半の頃、私達が夫婦喧嘩をした時の親方の言葉です。
“(あんたの奥さんは)
使える女だから取っておけ”
と主人が言われたのです。
ぶっきらぼうな言葉ですが、この言葉も私を永年どれだけ支えたか、、、
変な褒め言葉よりも
どれだけ嬉しかったか知れません。
客商売と鮨への追求から
培われた鋭い眼力を持ったスゴイ親方です。
私・主人・息子共々、親方の意思を受け継ぎ
今後更に精進していきたいたいと思います。
今後とも宜しくお願いします。
女将 / 佐藤 美由紀